「フリーランスに頼めば半額になると聞いた。でも、本当にそれで大丈夫なのか」——中小企業の経営者の方から、よくいただく問いです。たしかにフリーランスは人月単価60〜80万円、開発会社の半額に近いケースもあります。ただし、安さの裏側には「属人化」「継続性」「スキルの偏り」といった、価格表には現れないリスクが潜んでいます。本記事では、フリーランス・中小開発会社・大手SIerの3軸で費用と中身を分解し、自社にとってどこに頼むべきかの判断軸を整理します。

この記事の結論(3行)

  • フリーランス60〜80万、中小開発会社80〜120万、大手SIer150万〜の人月単価差は「人件費」ではなく「組織コスト」と「保険料」
  • 業務の複雑度が中以下ならフリーランス+小規模専門会社の組合せで、相場の半額(例:700〜1500万→500万)が現実的に狙える
  • 「安いから」「有名だから」で選ばず、属人化リスクと中間マージンの両方を見て依頼先を分ける
フリーランスと開発会社を天秤にかけて比較する経営者のイメージ

なぜ人月単価がここまで違うのか

フリーランスと開発会社の見積もりを並べると、同じ機能なのに金額が2倍違う、ということが普通に起こります。「同じシステムなのに、なぜここまで差が出るのか」を分解すると、価格差の正体が見えてきます。

フリーランス60〜80万円の中身

フリーランスエンジニアの人月単価は、おおむね60〜80万円のレンジに収まります。この金額はほぼそのまま個人の手取りに近く、組織を維持するための間接費はほとんど含まれていません。営業担当・経理・総務・管理職といったレイヤーが存在しないため、見積もり書の数字がそのまま手を動かす人の人件費になります。

ただし、フリーランスの中にも幅があります。経験10年以上で大手SIerから独立した層は80万円超、副業のWebエンジニアは40〜60万円という具合に、スキルレンジが広い。同じ「フリーランス60万」でも、業務システム開発の経験が浅い人と、要件定義から運用まで一人でこなせる人では、出てくるアウトプットが3〜4倍違うこともあります。

中小開発会社80〜120万円の中身

中小開発会社(社員5〜50名規模)の人月単価は、80〜120万円が一般的なレンジです。フリーランスと比べて20〜40万円高くなる理由は、3つあります。

第一に、組織を維持するための間接費。営業・経理・人事・オフィス家賃などが原価に乗ります。第二に、複数人で開発する体制のオーバーヘッド。1人月分の作業を3人で分担すると、コミュニケーションコストが上乗せされます。第三に、品質保証のためのレビュー工数。コードレビュー・テスト・ドキュメント整備が標準化されている分、フリーランスの「個人技」よりも安定した品質が出やすい構造です。

大手SIer150万円〜の中身

大手SIer(社員500名以上)の人月単価は、150万円から始まり、上は300万円を超えるケースもあります。なぜここまで上がるのか。理由の大半は「組織の重さ」と「リスクプレミアム」です。

プロジェクト管理者、要件定義担当、設計担当、開発担当、テスト担当、品質保証担当——分業が細かく分かれており、それぞれにマージンが乗ります。さらに、多重下請け構造(元請→2次請→3次請)が一般的で、現場で実際にコードを書くエンジニアの人件費は、見積もり総額の3〜4割程度というケースもあります。残りは「組織を回すための費用」と「失敗したときに会社が責任を取るための保険料」です。

3軸の差分を1枚に整理する

ここまでの差分を、表で整理します。中小企業の経営者として、まずはこの3軸の中身を把握することが、依頼先を選ぶ第一歩です。

| 比較項目 | フリーランス | 中小開発会社 | 大手SIer | |---|---|---|---| | 人月単価 | 60〜80万円 | 80〜120万円 | 150〜300万円 | | 300万円規模の発注で得られる工数 | 約4〜5人月 | 約2.5〜3.5人月 | 約1.5〜2人月 | | 体制 | 1人 | 3〜5人 | 10人以上の多層体制 | | 業務理解の深さ | 個人のスキル次第 | 業界特化型なら深い | 標準化された汎用設計 | | 納期遵守の安心感 | 個人の信頼に依存 | 組織として担保 | 契約で厳密に担保 | | 継続性・属人化リスク | 高い(撤退・廃業リスク) | 中(会社が継続すれば安心) | 低い | | 柔軟性・スピード | 高い | 中〜高 | 低い | | 中間マージン | ほぼなし | 20〜40% | 50〜70% |

同じ300万円の予算でも、フリーランスなら4〜5人月、大手SIerなら1.5〜2人月。3倍近い差が出ます。ただし、フリーランスの4人月と大手SIerの1.5人月は、出てくるアウトプットの「種類」が違います。前者は機能数で勝負、後者は品質保証と運用安定性で勝負、という構造です。手元の見積もりが自社の業務にとって妥当かは、業務改善・システム見積もりAI適正診断で、人月単価と工数の内訳から逆算できます。

業務の複雑度別に「最適な依頼先」を見極める

費用だけで決めると、ほぼ確実に失敗します。業務の複雑度別に、依頼先の向き不向きが変わるからです。ここでは「単機能」「業務の流れ全体」「基幹業務」の3レベルで整理します。

単機能・周辺業務(〜150万円規模)

100〜150万円規模で、Excelからの脱却・写真管理・日報入力といった「単機能」を作る場合は、フリーランス一択に近い構造です。中小開発会社に頼むと、最低受注金額(200〜300万円)の壁に当たり、必要以上の機能まで載せた見積もりが出てくる。大手SIerに至っては、そもそも受注対象外です。

このレンジで重要なのは「スキル見極め」です。GitHubでコードを公開しているか、過去の納品物を見せられるか、要件定義を一緒にやってくれるか——この3点で、安かろう悪かろうの落とし穴を避けられます。

業務の流れ全体(300〜800万円規模)

問い合わせ受付から請求まで業務の流れを通しでデジタル化する300〜800万円規模になると、判断が分かれます。フリーランス1人で完結させると属人化リスクと納期遅延リスクが急上昇します。1人月の作業を3〜4ヶ月分積み上げる構造になるため、途中で病気や別案件と重なるとプロジェクトが止まります。

このレンジでは、「フリーランス+小規模専門会社」の組合せがコストと安心感のバランスを取りやすい。要件定義と設計を会社側が担い、実装の一部をフリーランスに切り出す。業界特化型・技術特化型の小規模会社は、人月単価が80〜100万円台で抑えられることが多く、品質と価格のバランスが取れます。

基幹業務・複数部署横断(1000万円〜)

1000万円を超える基幹業務クラスになると、フリーランス単独はほぼ不可能です。複数部署を横断する業務フロー、社外との連携、24時間稼働の安定性を個人で担保するのは現実的ではありません。

ただし、ここで「だから大手SIer」と短絡するのも危険です。大手SIerの1000万円見積もりの中身は、半分以上が中間マージンと多重下請け構造のオーバーヘッドというケースが珍しくない。技術特化型の中小開発会社に発注すれば、同じスコープが500〜700万円で収まることが実際に起こります。

業務の複雑度と依頼先のマッピング図

フリーランスのリスクと開発会社のリスク、どちらも見て選ぶ

「フリーランスは安い、開発会社は安心」という単純な対比では、判断を誤ります。両者には、それぞれ違う種類のリスクがあるからです。

フリーランス固有のリスク

フリーランスに依頼する際、価格表には載らない最大のリスクは「継続性」です。納品後3年で個人事業を畳んでしまった、別の会社に正社員として転職した、健康上の理由で開発業務から離れた——こうした事態は珍しくありません。ソースコードを引き継いだ次の開発者が、前任者の設計思想を読み解けず、結局作り直しになるケースが多発します。

属人化のもう1つの側面は、「スキルの偏り」です。フロントエンドは得意だがインフラは弱い、フレームワークは新しいものを使うがセキュリティ知識が不足している、といった偏りが、本人にも自覚されていないことがあります。1人で全工程を担う構造上、第三者のレビューが入りにくく、技術的負債が蓄積しやすい構造でもあります。

開発会社固有のリスク

一方、開発会社に頼めば安心かというと、これも違います。最大のリスクは「中間マージンの不透明さ」です。見積もり書に「設計:100万円」「開発:300万円」と書かれていても、その内訳が、実際にコードを書くエンジニアの人件費なのか、営業担当の取り分なのか、上位下請け会社の利益なのかは、外からは見えません。

さらに、業界一般の慣行として「多重下請け構造」が深く根付いています。1次請が3割抜いて2次請に流し、2次請が2割抜いて3次請に流す——という構造の中では、顧客が払った金額の半分以下しか、実際の開発者には届きません。これは大手SIerに限らず、中堅Web開発会社でも一定程度起こります。「会社だから安心」という思い込みが、見積もりの中身を見ない理由になってしまうと、結果として高い保険料を払わされることになります。

経営者目線で考える「フリーランスと会社、どちらに頼むか」

ここからは、技術論ではなく経営の話です。業界の通説では「業務システムは会社に頼むべき、フリーランスはリスクが高い」と言われがちですが、これは中堅以上の大手企業向けの考え方です。中小企業にとっては、状況が違います。

中小企業の経営者として持つべき視点は3つあります。

第一に、「価格差は人件費ではなく組織コストである」という認識。フリーランス60万と中小開発会社100万の差40万円のうち、人件費の差は10〜20万円。残りは、組織維持費・分業のオーバーヘッド・品質保証のための工数で、この40万円が「自社にとって必要な保険料か」を判断するのが経営者の役割です。

第二に、「中間マージンと属人化リスクは交換できない」という理解。会社に頼めば中間マージンを払うことで属人化リスクを下げられる。フリーランスに頼めば逆になる。どちらが正しいかではなく、「どちらのリスクなら自社で扱えるか」を選ぶ問題です。

第三に、「業務範囲を分割すれば、依頼先も分割できる」という発想。1社にまるごと発注して相場2000万を払うより、3社に分割して合計800万で収める方が、運用後の柔軟性も高まります。多重下請けと中間マージンの積み重ねは、技術的に必要な構造ではなく、業界が長年積み上げてきた商習慣の結果に過ぎません。

ぷらすわんの実例:AI-SAKU開発(市場相場700〜1500万 → 500万)

弊社の実例を1つ紹介します。AI業務効率化サービス「AI-SAKU」の開発案件です。

このカテゴリ(AI機能を組み込んだSaaS型業務システム)の市場相場は、大手SIerに依頼すれば700万〜1500万円のレンジ。要件定義3〜4人月、設計2〜3人月、開発6〜8人月、テスト2〜3人月という積み上げで、合計13〜18人月、人月単価100〜150万円という計算です。

弊社では、これを 500万円 で開発・納品しました。相場の半額以下、もっとも高いレンジと比べれば3分の1です。

なぜこの金額が実現できたか、構造を分解します。

第一に、「Claude Codeを軸にしたAI駆動開発」で、実装工数を5〜6割削減しました。要件定義書をAIに読ませて画面設計のたたき台を生成し、機能仕様書からコードの骨組みを自動生成する。エンジニアの作業は「AIが書いたコードを業務要件に合わせて整える」に集中するため、実生産性が2倍以上になります。

第二に、「フリーランス+小規模専門会社の組合せ」を採用しました。要件定義と設計、品質管理は弊社が担い、特定領域の実装は信頼できるフリーランスに切り出す。大手SIerの多重下請け構造を避けつつ、フリーランス単独の属人化リスクも回避する構造です。

第三に、「業務を削り込む覚悟」を発注者と共有しました。「あったら便利」レベルの機能を全部削り、業務の中核に絞って実装する。相場で18人月のスコープが、実質8人月で収まりました。

経営者として得た学びは、「価格は構造で決まる」という1点です。同じ機能を作るのに、構造を変えれば3分の1になる。これは技術の進化であると同時に、発注の仕方の進化でもあります。手元の見積もりを診断することで、適正価格との差を具体的な数字で把握できます。

AI-SAKU開発のチーム構成と工数削減のイメージ

中小企業が依頼先を決めるための3つの実践

最後に、明日から使える実践的なアプローチを3つ提示します。

業務範囲を分割可能な単位に切り分ける

「業務システムを作りたい」と1つの要望で見積もりを取ると、依頼先によって金額が2〜3倍違う見積もりが返ってきます。まず、業務範囲を「基幹業務」「業務の流れ全体」「周辺業務」の3レベルに分けます。レベルごとに最適な依頼先が違うため、分割した上で別々に見積もりを取ると、トータルコストが3〜4割下がることが珍しくありません。

人月単価と工数内訳を開示させる

フリーランスでも会社でも、「一式300万円」という見積もりは受け取らないこと。必ず「○○人月 × 人月単価○○万円」という根拠を出してもらいます。この2点を開示しない相手は、見積もりの根拠が弱いか、内訳を見せたくない理由がある(多重下請けや高い中間マージンを抱えている)と判断できます。

1社全任せから3社で役割分担へ

「1社にまるごと任せる方が楽」という思い込みを捨てることです。基幹業務の設計と実装は小規模専門会社、運用保守はフリーランス、追加機能の開発は別の専門会社、という3社体制は、運用してみると思ったほど面倒ではありません。中間マージンも下がり、特定の1社に依存するリスクも分散できます。他社見積もりとの比較を依頼することで、構造の違いを具体的に確認できます。

まとめ

フリーランスと開発会社の費用差は、単なる人件費の違いではなく、「組織コスト」「中間マージン」「保険料」の合計です。フリーランス60〜80万円、中小開発会社80〜120万円、大手SIer150万円〜という3軸の中身を理解すれば、自社の業務に対して、どの依頼先が妥当かが見えてきます。

中小企業にとって現実的な戦略は、「業務範囲を分割して、レベルごとに最適な依頼先を選ぶ」ことです。1社に全部任せて2000万円払うより、3社に分割して800万円で収め、運用の柔軟性も確保する方が、経営合理性は高い。

いま、フリーランスと開発会社の見積もりを並べて迷っているなら、ぜひ一度送ってください。人月単価・工数内訳・組織コストの3軸で項目別に整理し、自社にとっての適正価格を無料で診断します。