デイサービスの業務は「送迎」「記録」「請求」の3本柱で回りますが、多くの事業所ではこの3つが別々のツールで管理され、月末に転記作業で繋いでいるのが実態です。送迎は紙のルート表、記録は介護ソフト、請求は別の請求ソフト——この分断が職員の負担と月次の残業を生んでいます。本記事ではデイサービスの業務システムを送迎・記録・請求で一気通貫に繋ぐ設計と、現実的な投資判断を経営者目線で解説します。
この記事の結論(3行)
- 送迎・記録・請求が別ツールで分断されているのがデイサービスの典型課題。月末の転記作業に20〜40時間消えている
- 一気通貫システムは新規開発300〜600万円、既製ソフト組み合わせ100〜200万円で構築可能
- 完全内製ではなく「既製の請求ソフト + 内製の送迎・記録アプリ + API連携」が現実解
デイサービスの3大業務が分断されている現状
デイサービスの事業所をヒアリングすると、3つの業務がそれぞれ独立したツールで動いていることが分かります。
- 送迎は紙のルート表 + ドライバーの携帯電話
- 記録は介護ソフトのPC入力
- 請求は別の介護報酬請求ソフト
送迎は紙のルート表で運用
朝夕の送迎ルートは紙で印刷され、ドライバーが利用者の自宅を回ります。家族との連絡は電話、緊急時の連絡網はLINEグループ、利用者の体調変化はメモ書きで職員に伝達——こうしたアナログ運用が日常です。
記録は介護ソフトのPC入力
利用中の食事量、入浴、機能訓練の様子は介護ソフトに入力しますが、PC1〜2台を職員で共有しているため入力待ちが発生します。結果としてメモ用紙への現場記録 → 事務所での転記、という二度手間になります。
請求は別の介護報酬請求ソフト
月末になると、介護ソフトから利用実績を出力し、別の請求ソフトに転記して介護報酬請求を作成します。20〜40名規模の事業所で、月20〜40時間が転記作業に消えます。
一気通貫システムを実現する3つの繋ぎ方
3業務を一気通貫で繋ぐには、3つのアプローチがあります。
| アプローチ | 費用 | 期間 | 向いている事業所 | |---|---|---|---| | フル新規開発 | 600〜1,200万円 | 9〜15か月 | 複数拠点・将来展開予定 | | 既製+追加開発 | 200〜500万円 | 3〜6か月 | 単一拠点・既製ソフト活用 | | 既製ソフト組合せ | 100〜200万円 | 2〜4か月 | 小規模・予算重視 |
完全新規開発は費用が大きいため、現実的には「既製+追加開発」または「既製ソフト組合せ」が選ばれます。投資配分を整理したい場合は業務改善・システム見積もりAI適正診断で個別に整理できます。
アプローチ1: フル新規開発
送迎・記録・請求の全てを一から開発する選択肢です。複数拠点を持つ法人や、将来の展開を見据えて自社プラットフォームを持ちたい事業者向けで、9〜15か月の開発期間と600〜1,200万円の予算が必要です。介護報酬請求のロジックは法改正に追随する必要があり、内製すると保守コストが年100〜200万円かかります。
アプローチ2: 既製+追加開発
請求ソフトは既製品を使い、送迎管理アプリと記録アプリを追加開発する構成です。送迎ルート表、ドライバー向けスマホアプリ、家族向け連絡機能、現場記録アプリを200〜500万円で開発し、既製の請求ソフトとAPI連携します。中規模事業所で最も選ばれるパターンです。
アプローチ3: 既製ソフト組合せ
請求ソフト、送迎管理ソフト、記録ソフトをそれぞれ既製品で揃え、APIまたはCSV連携で繋ぐ構成です。100〜200万円のソフト初期費用と、月額3〜10万円のランニング費用です。各ソフトの連携が浅く、月末の調整作業が完全には消えませんが、最も低リスクで始められます。
経営者目線で考える「デイサービスのシステム投資判断」
デイサービスの経営者として、システム投資を判断する視点は3つです。
第一に、自事業所の月次残業時間の内訳を把握できているか。「請求業務の月末残業が20時間以上」「送迎連絡で職員のスマホが鳴り止まない」など、定量的に問題点を整理することが第一歩です。
第二に、地域での競争環境はどうか。同地域に競合デイサービスが多い場合、家族向け連絡機能や送迎遅延のリアルタイム通知など、サービス品質を上げる方向の投資が効きます。競合が少ない場合は職員の労働環境改善(残業削減)に振った方が、職員定着率が上がり長期的な経営安定につながります。
第三に、補助金と介護報酬加算の活用です。IT導入補助金(補助率2分の1〜3分の2、上限450万円)、業務改善助成金、介護報酬の業務継続計画加算など、活用できる制度が多く存在します。これらを組み合わせれば、300〜500万円の投資を実質100〜200万円に抑えられます。
ぷらすわんの実例:Aデイサービスの一気通貫システム構築
ぷらすわんでお手伝いした仮想Aデイサービスの例です。定員30名、職員12名の単一拠点で、月末残業が職員1人あたり10〜15時間、送迎連絡で職員のスマホが鳴り止まない状況でした。
ヒアリングで分かったのは、請求ソフトは既存の業界標準ソフトで満足しており変える理由がないこと、送迎と記録の分断が一番のボトルネックだったことです。そこで「請求は既製品のまま、送迎・記録だけを開発」する方針で、380万円・5か月の開発を行いました。
開発したのは、ドライバー向け送迎アプリ(ルート表示、利用者ごとの注意事項、家族への到着通知)、現場職員向け記録アプリ(タブレット入力、テンプレート選択、写真記録)、管理者向けダッシュボード(出欠管理、請求ソフトへのCSV連携)の3点セットです。
導入から3か月で、家族からの送迎遅延問い合わせが月50件から5件に減少、月末残業が職員1人あたり10時間から3時間に短縮、職員の体感的な疲労度が大きく下がりました。年間で職員12名 × 7時間 × 12か月 = 1,008時間の労働時間が解放され、新規利用者の獲得活動に振り向ける余裕が生まれました。
経営的なポイントは、請求ソフトを変えなかったことです。デイサービスの業務システム投資では、変える必要のないものを変えない判断が、回収速度を大きく上げます。自事業所の課題を診断するところから始めてください。
まとめ
デイサービスの業務システムは、送迎・記録・請求の3業務が分断されているのが典型課題です。月末の転記作業に20〜40時間が消え、職員の残業と疲弊につながっています。
一気通貫システムを構築する選択肢は、フル新規開発(600〜1,200万円)、既製+追加開発(200〜500万円)、既製ソフト組合せ(100〜200万円)の3つです。現実的には「既製の請求ソフト + 内製の送迎・記録アプリ + API連携」が回収しやすい構成になります。
経営判断のポイントは、変える必要のないものを変えないこと、補助金と介護報酬加算を組み合わせて実質負担を抑えること、そして職員の労働時間を経営課題に直結する活動へ振り向ける戦略を持つことです。自事業所の3業務の状況を項目別に整理してから判断する流れをお勧めします。