デザイン会社の業務は、案件、進捗、請求の3つが分断されたまま回っているケースが多く見られます。Backlogで進捗、Excelで見積もり、MFクラウドで請求——それぞれは便利でも、情報の橋渡しを毎回手作業でやっていると、月末に大きな摩擦が生まれます。本記事ではデザイン会社向けの業務システムを「案件・進捗・請求の一気通貫」で設計するための考え方と、300〜800万円のレンジで現実的に着地させる手順を経営者目線で整理します。
この記事の結論(3行)
- 案件番号を1本通すだけで、見積もり・進捗・請求の3つが自動的につながり、月末作業が半減する
- パッケージ製品は汎用設計で「制作工程の単位」が合わない。10〜30人規模ならカスタム開発が結果的に安い
- 一気通貫システムは300〜800万円。BacklogとMFクラウドのライセンス費を3年でみると逆転する場合もある
デザイン会社の業務システムが「分断」を生みやすい3つの理由
デザイン会社の現場では、案件ごとに使う道具が増えていきます。Slack、Backlog、Figma、Adobe、Excel、MFクラウド——どれも単体では優秀ですが、案件情報の入口が複数ある状態が常態化します。
- 制作工程ごとに最適な道具を選んだ結果、情報が散らばる
- クライアント単位ではなく案件単位で動くため、顧客情報の更新が遅れる
- 1案件あたりの単価が小さく、管理コストをかけにくい
この3つが重なると、デザイナーが本業より管理作業に時間を取られる構図ができあがります。10人規模のデザイン会社では、月20〜30時間が転記・コピペ・照合作業に消えている試算が一般的です。
制作工程ごとに最適な道具を選んだ結果、情報が散らばる
進捗管理はBacklog、デザインはFigma、見積もりはExcel、請求はMFクラウド。それぞれ単体では使いやすい構成ですが、案件名・金額・担当者・期限といった共通情報を4つのツールに同じ内容で入力する手間が日常的に発生します。
クライアント単位ではなく案件単位で動くため、顧客情報の更新が遅れる
デザイン業はリピート率が高い一方で、新規案件のたびに見積もりから始まる構造です。顧客マスタの更新タイミングがあいまいで、3年前の住所のまま請求書を発行してしまう事故も起きやすくなります。
1案件あたりの単価が小さく、管理コストをかけにくい
WEB制作1本50〜200万円、ロゴ1本30〜80万円という単価では、案件あたりに割ける管理工数は限られます。だからこそ「自動的につながる仕組み」が必要で、人手による管理に依存すると利益率が下がります。
一気通貫システムは「案件番号を1本通す」設計が肝心
デザイン会社の業務システムを一気通貫にする鍵は、技術ではなく設計思想です。案件番号を1本通すだけで、見積もり・進捗・請求の3つが同じIDで紐付き、転記作業が自動化されます。
| 領域 | 現状の道具 | 統合後の管理単位 | |---|---|---| | 見積もり | Excel | 案件番号で発番、PDF自動生成 | | 進捗 | Backlog | 案件番号にタスクをぶら下げる | | 請求 | MFクラウド | 案件番号から請求データを引き継ぐ |
この設計を実現すると、デザイナーは進捗を更新するだけで、見積もりや請求の状態も自動で同期されます。経理担当者が月末に「請求漏れがないか」を案件番号一覧で確認できるため、漏れ防止にも効果が出ます。一気通貫の設計を自社の規模感で項目別に整理すると、無理のないスコープが見えてきます。
経営者目線で考えるデザイン会社の業務システム投資判断
ここからは経営の話です。デザイン会社の業務システムを内製・カスタム開発する判断は、ライセンス費と人件費の両面で考える必要があります。BacklogとMFクラウドを10〜20アカウントで使うと、年間60〜120万円のライセンス費が発生します。3年で180〜360万円です。
これに対し、案件・進捗・請求を統合したカスタムシステムは300〜800万円のレンジで構築できます。初期費用は高く見えますが、3年単位で見れば差は縮まり、5年運用すれば逆転するケースもあります。さらに重要なのが「デザイナーが管理作業から解放される時間」です。10人規模で月20時間を月5時間に圧縮できれば、年間180時間、人件費換算で90〜120万円相当の効果が出ます。
経営判断としては、初期費用の大小ではなく「3〜5年でデザイナーが本業に戻る時間がどれだけ生まれるか」で測ってください。この視点で判断すると、カスタム開発の投資対効果が見えやすくなります。
ぷらすわんの実例:仮想A社(デザイン会社・15人規模)
仮想A社は、ロゴ・WEB・パンフレット制作を手がける15人規模のデザイン会社です。年商2億円、月の進行案件は40〜60本という規模感で、案件管理はBacklog、見積もりはExcel、請求はMFクラウドで運用していました。
ぷらすわんが提案したのは、案件番号を軸にしたNext.js + Supabase構成のカスタム業務システムです。ポイントは3つで、第一に案件番号を発番すると見積もりPDFが自動生成される仕組み、第二にBacklogのタスクと案件番号を紐付けるAPI連携、第三にMFクラウドへ請求データをCSVで連携する出口設計です。費用は450万円、開発期間4ヶ月で、月の管理工数を80時間から30時間に圧縮しました。
特に効果が大きかったのが、経理担当者の月末作業です。これまでは1日かけて「請求漏れ案件」を探していましたが、案件番号一覧で「未請求」フラグを見るだけで済むようになり、4時間で完了するようになりました。デザイン会社の業務システムを診断する際は、「どの作業が一番時間を食っているか」から逆算するのが現実的です。
まとめ
デザイン会社の業務システムは、案件・進捗・請求の3つが分断されたまま回っている現場が大半です。これを一気通貫にする鍵は技術ではなく、案件番号を1本通す設計思想にあります。300〜800万円のカスタム開発で月の管理工数を半減でき、3〜5年で投資回収できる構造を作れます。BacklogやMFクラウドのライセンス費と比較すると、長期では逆転するケースもあるため、初期費用だけで判断しないでください。デザイン会社の業務システム化を検討する経営者の方は、現状の管理工数を項目別に整理してから判断する流れをお勧めします。